若者よ、山へ登れプロジェクト(仮)Vol.1(九重編)


山に登ると思うことがある。

山には、若者が少ない。
特に、20代の登山者となると、お目にかかれる機会は一気に少なくなる。

次世代のアウトドア文化を謳うYAMAPの一員として、私は若者にもっと山へ登ってもらいたい。
そんなことを考えていたある日、YAMAPのイベントで知り合ったコーマ氏が、登山初心者の若者を集めて九重へ登るという話を聞きつけた。

若者に登山文化を広めたいと語るコーマ氏

若者が登山に親しみを持つヒントを求めて、私は山行に同行させてもらうことにした。

当日の動画

当日。集まったのは、大学生から社会人数年目までの13人の若者たち。彼らのほとんどが、これまで登山の経験がないとのことだ。


自己紹介も程々に、登山は牧ノ戸峠から始まった。開始5分。林道の神秘的な木漏れ日に歓声が上がる。みな、思い思いにお気に入りの構図を見つけ、カメラやスマートフォンで撮影を始める。

彼らの綺麗な写真やカッコいい映像などに対するアンテナは驚くほどに高い。そして、今回撮られた写真の多くが、Instagramに載るだろう。山は日常の風景と一線を画す、絶好の撮影スポットだ。360°が非日常。それは、山へ登る大きな動機になる。
(登山の服装を調べるのに、まずInstagramを使ったという話には驚いたものだ)



舗装された道から、本格的な登山道へ。傾斜がつき始め、高度が上がっていく。それに応じて、景色も変化を始める。樹林帯から抜け出し、目の前が開けた。その瞬間、二度目の歓声が上がった。

再び始まる撮影大会。日が暮れる前に下山できるか、若干の不安を覚えたが、彼らの眩しい笑顔を見ているとそんなことも忘れてしまう。


一度登ってしまえば、九重はしばらく優しい。遠くに稜線を望みながら、広い道を賑やかに進むことができる。開放的な気分になったのか、みな会話も弾んでいるようだ。ネガティブな会話は一切聞かれない。


山では誰もが前向きになれる。すれ違う全ての人とにこやかに挨拶をしあう環境が、下界にはあるだろうか。彼らも他のハイカーと、和気藹々とコミュニケーションを取っていた。

「写真を見返したら、普段の自分じゃない自分みたいな感じでした。弾けてるなって」
そう語るのは、参加者の1人、大学生のみゆさん。「山=きつい」というイメージがあったという彼女だが、登ってみると「きついけど、楽しい」という印象を抱いたそうだ。



しかし、どんな山もずっと優しいわけではない。ここは九州本土最高峰、九重連山。クライマックスが近づくにつれ、道は険しさを増していく。


さすがに疲れを見せるメンバーも出てきた。すると、自然とそれを励ますメンバーが現れる。誰に言われるまでもなく、とても自然な営みとして、疲れている相手に何をしてあげればいいのかを、みなが考えていた。

登山では困ることだらけ。そして、自然を前に人間はあまりにも無力だ。だからこそ、助け合う必要がある。そのためには、相手の立場になって考えることが大事であり、これはそのまま社会生活にそっくり置き換えられる。学校の自然教室や登山研修などが、あちこちで行われているのも納得ができる。


確かに登山にはきつい側面があるが、きついからこそのご褒美もある。一行は、中岳の麓にある御池に陣を張り、昼食に移った。メニューは各々が選んだカップ麺。それと、こちらで準備したウィンナー。さらに、コーマ氏が持ってきた冷えたサイダー。

疲れや達成感は、極上の調味料になるらしい。「一番印象的だったのは、昼食」という声も出てるほど、山でのお昼ご飯はインパクトがあったようだ。



昼食後、一行はいよいよ中岳山頂へアタックをかける。山行の序盤に「あそこが目指す山頂だよ」と伝えると、多くのメンバーが驚きと絶望の顔を見せていたものだが、今となればゴールは目の前。みなの目は、爛々と輝いていた。
さっきまであそこにいたんだ。自分はこんなに登ってきたんだ。後ろを振り返って、そう分かったとき、とても感動しました
みゆさんは、当日のことをそう振り返っていた。



そして、ついに彼らは初めての山頂へと登り立った。そこからの景色は、ここまで頑張ってきた自分へのご褒美だ。何度目か分からない歓声が上がり、終わらない写真撮影大会が始まる。もう何度も見たお決まりの流れだが、私はそれを笑顔で見つめていた。


「山頂が近づくにつれ、ワクワクが止まらなかった」
大学1年生のあすかさんはそう語る。そして彼女はこう続けた。
「大学生活にない。うわぁ、辛い!という経験ができた。だからこそ達成感があった。もう一回、あの辛さを味わいたいです笑」

彼女は、登山の醍醐味を味わったに違いない。初めての登山で、こういう体験をできることはとても貴重だ。第一印象が人の印象に大きく影響するのと同様に、登山も始まりが肝心だと思う。

はじめに良い経験をしてもらい、「また登りたい」と思ってもらう。
実際に、行動に移してもらう。
そして、今度は彼らが周りの初心者を巻き込んでいく。

そんな循環を起こしていくことが、若者の登山者が増えていくために必要なことだと、改めて分かった貴重な山行だった。


あとがき
若者のパワーに圧倒され続けた山行。山に登る理由は様々ですが、彼らの理由はとてもシンプル。「楽しそう!」「なんかワクワクする!」「新しいことやってみたい!」ほぼこんな感じです。

「山」とか関係なく、その姿勢が素敵だなと思いました。でも、願わくば彼らのエネルギーが今後も山に向いてくれると嬉しい限りです。

また、今回の山行と後日の会話で、若者の登山者を増やすために解決するべき課題が、いくつか浮き彫りになりました。次のエントリーでは、それらに触れてみようとも思います。そして、やるべきことは分かってきたので、行動を起こそうと思います。

以上

若者よ、山へ登れプロジェクト(仮) Kota

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